1級建築士スワイプ法規の解説試験に出る作品

建築基準法|避難

歩行距離と直通階段
居室から階段まで何mか

避難階(地上へ直接出られる階)以外の階では、居室のどこからでも、避難階か地上に通じる直通階段までの歩行距離が決まった数字以下になるように、階段を置きます。上限は居室の種類・主要構造部・内装・階(15階以上)で変わり、主要構造部が準耐火構造の事務室など(14階以下)なら50m。根拠は建築基準法施行令120条、2つ以上の直通階段が要る階と重複区間は121条。特殊建築物・階数3以上・延べ面積1,000㎡超などの建物にかかります(117条)。
直通階段(傾斜路を含む):条文に定義は無く、一般に、ほかの階を通らずに避難階か地上まで直接つながっている階段をいいます。

事務室会議室廊下事務室倉庫居室のいちばん遠い所から近い方の直通階段までの歩行距離50m以下事務室など/主要構造部が準耐火構造14階以下・内装の加算なし直通階段もう1つの直通階段赤い線:歩く道すじで測る点線のような直線では測らない
ある階の平面を斜め上から見た模式図(実際の設計例ではありません)。この広さの階は2以上の直通階段が要るので、階段は2つ。赤い線が歩行距離で、居室のいちばん遠い所から、戸・廊下を通って近い方の直通階段まで歩く道すじで測る

歩行距離の早見表

居室の各部分から、避難階か地上に通じる直通階段の一つまでの歩行距離の上限です。

居室の種類主要構造部が準耐火構造・不燃材料その他(準耐火構造でない木造など)
① 物販店舗・飲食店など採光上の無窓居室も30m内装を準不燃で40m30m
② 病院・ホテル・共同住宅など50m内装を準不燃で60m30m
③ ①②以外事務室など50m内装を準不燃で60m40m

根拠:建築基準法施行令120条1項・2項。「準耐火構造」には、特定主要構造部を耐火構造にした場合を含む。「内装を準不燃」は、居室と、そこから地上に通じる主な廊下・階段などの壁(床から1.2m以下を除く)・天井の仕上げを準不燃材料にしたもの。

15階以上の階の居室内装を準不燃にしても+10mにはならず、表の数字のまま(②③で50m)。内装を準不燃にしないと、表の数字から10mを引きます(②③で40m、①で20m)。

「歩行距離」と「水平距離」歩行距離は、戸・廊下を通り、曲がり角で曲がって実際に歩く道すじの長さ(上の図の赤い線)。排煙口までの30mのような「水平距離」は直線で測るので、言葉の違いに気をつけます。

居室の3つの区分

どの数字を使うかは、建物全体の用途ではなく、その居室の種類で決まります。①②は、特殊建築物の「主たる用途に供する居室」(売場・客席・病室・客室・住戸の居室など)が対象です。

  • ① 30m:法別表第一(い)欄(4)項の用途=百貨店・マーケット・展示場・キャバレー・カフェー・ナイトクラブ・バー・ダンスホール・遊技場・公衆浴場・待合・料理店・飲食店・物品販売業を営む店舗(床面積10㎡以内を除く)の主たる用途の居室。それと、採光上の無窓居室(採光に有効な窓の面積が床面積の1/20未満の居室)。構造にかかわらず30mで、②③のような構造による差がありません。
  • 無窓居室でも①から外れる場合:令和5年国土交通省告示208号の次の条件をすべて満たす居室は、無窓居室としての扱いが外れ、用途で決まる区分(①〜③)で考えます(2023年4月から。物販店舗・飲食店などの主たる居室なら①のまま)。
    ①床面積30㎡以内(病院・診療所(患者の収容施設があるもの)・児童福祉施設等(通所だけのものを除く)の居室と、地階の居室は除く)か、居室と廊下などに非常用の照明 ②廊下などを不燃材料の壁・戸で区画するか、スプリンクラーなど ③直通階段の階段室を準耐火構造の床・壁と防火設備で区画するか、屋外階段(屋内からの出入口に防火設備) ④居室から直通階段までの廊下などが、火災の発生のおそれの少ない室であること(区画して避難の安全を検証すれば除く) ⑤自動火災報知設備
  • ② 50m(その他の構造は30m):法別表第一(い)欄(2)項の用途=病院・診療所(患者の収容施設があるもの)・ホテル・旅館・下宿・共同住宅・寄宿舎・児童福祉施設等の主たる用途の居室。入院・宿泊など夜も人がいる用途が多いので、その他の構造(準耐火構造でない木造など)では③より厳しい30mです。
  • ③ 50m(その他の構造は40m):①②以外の居室。事務所の事務室、学校の教室なども③。

根拠:建築基準法施行令120条1項の表、116条の2第1項1号、115条の3、建築基準法別表第一、令和5年国土交通省告示208号

準耐火構造などは内装で+10m、15階以上で−10m

主要構造部が準耐火構造(または不燃材料)の建物で、居室とそこから地上へ通じる主な廊下・階段などの壁・天井の仕上げを準不燃材料にすると、表の数字に10mを足せます。火が燃え広がりにくいぶん、逃げる距離を長くしてよい、という決まりです。15階以上の階では向きが逆になり、内装を準不燃にしてはじめて表の数字のまま、しなければ10m短くなります。

③事務室など準耐火構造・不燃材料内装の制限なし内装を準不燃
14階以下50m60m
15階以上40m50m
  • ①物販店舗・飲食店など:14階以下で30m(準不燃で40m)、15階以上で20m(準不燃で30m)。
  • その他の構造(準耐火構造でない木造など):内装による+10mは使えません。
  • 壁の1.2m以下:床から1.2m以下の部分の壁は、準不燃にしなくてかまいません。回り縁・窓台なども除きます。

根拠:建築基準法施行令120条2項・3項

避難階とメゾネット住戸

  • 避難階では:階段から屋外への出口までの歩行距離は、120条の数字以下(事務室などで準耐火構造なら50m)。居室の各部分から屋外への出口までは、その2倍以下(同じく100m)。避難上有効な開口部がある居室は、この2倍の決まりから外れます。
  • メゾネット住戸:主要構造部が準耐火構造(耐火構造を含む)の共同住宅で、住戸の階数が2か3、出入口が1つの階にしかない住戸は、出入口の無い階の居室の各部分から直通階段までの歩行距離が40m以下なら、120条1項の表の数字が適用されません。出入口の無い階からは、住戸の中の階段と出入口を通って直通階段へ向かうことになります。

根拠:建築基準法施行令125条1項、120条4項。避難階は「直接地上へ通ずる出入口のある階」(令13条1号)。

2以上の直通階段が要る階

避難階以外の階が次のどれかに当たると、その階から避難階か地上に通じる直通階段を2つ以上設けます。1つの階段が火や煙で使えなくなっても、もう1つで逃げられるようにするためです。床面積はその階の、表に書いた部分の合計で判定します。除外の条件と判定の例は2以上の直通階段のページに詳しく書いています。

その階の用途2以上が要る条件準耐火構造・不燃材料なら
劇場・映画館・演芸場・観覧場・公会堂・集会場客席・集会室などがある階はすべて同じ
物品販売業を営む店舗床面積の合計1,500㎡超売場がある階はすべて同じ
キャバレー・カフェー・ナイトクラブ・バーなど客席・客室がある階5階以下で居室100㎡以下の階などは除く(下)除く条件の100㎡が200㎡に
病院・診療所病室/児童福祉施設等主たる用途の居室50㎡超100㎡超
ホテル・旅館・下宿宿泊室/共同住宅居室/寄宿舎寝室100㎡超200㎡超
6階以上の階上の条件に当たらない階居室があればすべて居室100㎡以下で、避難上有効なバルコニー等と、屋外避難階段か特別避難階段の構造の直通階段がある階は除く(劇場など・物販店舗・キャバレーなど・病院など・児童福祉施設等の階は除けない)除く条件の100㎡が200㎡に
5階以下の階上の条件に当たらない階居室が100㎡超避難階の直上階は200㎡超200㎡超直上階は400㎡超

根拠:建築基準法施行令121条1項1〜6号、2項(主要構造部が準耐火構造か不燃材料なら、50㎡→100㎡、100㎡→200㎡、200㎡→400㎡と読み替える)

  • キャバレーなどの階を除く条件:5階以下の階で、居室の床面積の合計が100㎡以下(準耐火構造なら200㎡以下)、かつ避難上有効なバルコニー・屋外通路などと、屋外避難階段か特別避難階段の構造の直通階段がある階。避難階のすぐ上かすぐ下の5階以下の階で、居室が100㎡以下(同200㎡以下)の階。
  • 「超」に注意:どの面積も「超える」ときに2以上が要ります。耐火構造の共同住宅の5階以下の階で、居室の合計がちょうど200㎡なら、直通階段は1つでかまいません(6階以上の階は、上の表の「6階以上の階」の条件も見ます)。
  • 物販店舗で3階以上を売場にするとき:床面積の合計1,500㎡超の物品販売業を営む店舗で3階以上の階を店舗に使う建物は、各階の売場と屋上広場に通じる2以上の直通階段を設け、それを避難階段か特別避難階段にします。そのうち5階以上の売場に通じるものは1以上を、15階以上の売場に通じるものは全部を特別避難階段に(令122条2項・3項)。
  • 小さな建物の特例:階数3以下・延べ面積200㎡未満の建物の避難階以外の階は、階段の部分(そこからだけ出入りする便所なども含む)とほかの部分(直接外気に開放された廊下・バルコニーなどを除く)を、間仕切壁か、次の防火設備・戸で区画すれば(または112条15項の国土交通大臣が定める建築物なら)、121条1項4号・5号(病院・診療所・児童福祉施設等・ホテル・共同住宅などの床面積による要件)は適用されません。1〜3号・6号は残ります。主要構造部が準耐火構造・不燃材料の建物で外れるのは4号だけです。
    病院・診療所・児童福祉施設等(入所する人の寝室があるもの)は防火設備(居室などにスプリンクラーがあれば10分間防火設備)、入所する人の寝室が無い児童福祉施設等・ホテル・旅館・下宿・共同住宅・寄宿舎は戸(ふすま・障子は不可)。どちらも遮煙性能があり、常時閉鎖か煙で自動に閉まるもの(112条19項2号)(121条4項)。

重複区間は歩行距離の1/2以下

直通階段を2つ以上設けても、居室から2つの階段へ向かう道すじが途中まで同じ廊下を通るなら、その重なった部分で火や煙に行く手をふさがれると、どちらの階段にも行けません。そこで、居室の各部分から各直通階段へ向かう通常の道すじのすべてに共通する部分(重複区間)の長さを、120条の歩行距離の数字の2分の1以下にします。

居室倉庫倉庫事務室重複区間(赤い線)歩行距離の1/2以下歩行距離50mの居室なら 25m以下ここで分かれる直通階段 A直通階段 B
重複区間の模式図。居室から階段A・Bへの道すじは、枝の廊下を出て分かれるまで同じ所を通る。この赤い部分の長さを、歩行距離の数字の1/2以下にする
  • 数字の例:歩行距離50mの居室(事務室など・準耐火構造)なら重複区間は25m以下、30mの居室(物販店舗など)なら15m以下。
  • 要らない場合:居室の各部分から、重複区間を通らずに、避難上有効なバルコニー・屋外通路などへ逃げられるとき。
  • かかるのは:121条1項で2以上の直通階段を設けなければならない階だけです。

根拠:建築基準法施行令121条3項

この決まりがかかる建物

歩行距離(120条)と2以上の直通階段(121条)は、施行令の「廊下、避難階段及び出入口」の節の決まりで、次のどれかに当たる建物にだけかかります。

  • 法別表第一(い)欄(1)〜(4)項の特殊建築物(劇場・病院・ホテル・共同住宅・学校・百貨店・飲食店など)
  • 階数が3以上の建物
  • 採光上の無窓居室(採光に有効な窓が床面積の1/20未満)がある階
  • 延べ面積が1,000㎡を超える建物
  • 別の建物とみなす部分:開口部のない耐火構造の床・壁で区画したとき、その床・壁で分けたそれぞれの部分。国土交通大臣が定めた構造方法で、火事のとき互いに火熱や煙の害が及ばないようにした部分も同じです。

根拠:建築基準法施行令117条1項・2項

一級建築士の試験ではこう出る

  • 耐火構造の共同住宅・ホテルの居室から直通階段まで50m以下。15階の居室は、内装を準不燃にしても+10mにならない。「60m」は誤り201720202025
  • 準耐火構造の展示場の、避難階以外の階の歩行距離は30m以下2018
  • 耐火構造の共同住宅のメゾネット(2層・出入口は一方の階だけ)は、出入口の無い階から40m以下20202026
  • 2以上の直通階段が要る物品販売業を営む店舗は、床面積の合計1,500㎡超(売場のある階)2020
  • 1,500㎡以下の物販店舗でも、居室の床面積で2以上になる(主要構造部が準耐火構造なら避難階の直上階は400㎡超など)20172022
  • 3階以上を売場にする物販店舗(1,500㎡超)は、各階の売場と屋上広場に通じる2以上の直通階段を避難階段か特別避難階段に20152023
  • 物販店舗で、直通階段のうち1以上を特別避難階段にするのは5階以上の売場に通じるもの2025
  • 耐火構造のホテル・旅館で2以上が要るのは、その階の宿泊室が200㎡超。ちょうど200㎡なら1つでよい20172022
  • 共同住宅は、その階の居室が100㎡超(主要構造部が耐火構造なら200㎡超)で2以上2019202020242025。2025は6階建てで、6階の除外(居室200㎡以下・避難上有効なバルコニー・屋外避難階段)まで問う

確かめる

主要構造部を準耐火構造とした地上5階建て・延べ面積2,000㎡の事務所(内装の制限なし)で、事務室の各部分から直通階段までの歩行距離は?

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主要構造部を耐火構造とした共同住宅の15階で、居室と廊下・階段の内装を準不燃材料にしたときの歩行距離は?

確かめる

2以上の直通階段が必要な階で、2つの階段への道すじが重なる部分(重複区間)の長さは、歩行距離の数値の?

法規の数字を、
スワイプで覚える

一級建築士の学科に出る法規の数字を、4択でくり返し解けます。間違えたものは、あとでもう一度出てきます。まずは10問で、いまの予測スコアを。

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出典:建築基準法施行令(e-Gov法令検索) 13条・115条の3・116条の2・117条・120条・121条・122条・125条、令和5年国土交通省告示208号(国土交通省)、一級建築士試験の過去問。このページは条文の要点をまとめたものです。実際の設計では、条文・告示と所管の行政庁の取り扱いを確かめてください。
更新:2026年10月25日

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