建築基準法|高さの制限
隣地斜線とは?
20m+1.25と後退緩和を図で
隣地斜線は、建物の各部分の高さを、その部分から隣地境界線までの水平距離に応じて抑える決まり(建築基準法56条1項2号)。住居系の地域では水平距離×1.25+20m、商業系・工業系などでは水平距離×2.5+31m以下にします。第一種・第二種低層住居専用地域と田園住居地域にはかからず、代わりに10mか12mの絶対高さ(55条)がかかります。20m(31m)を超える部分を隣地境界線から下げると、下げた距離だけ境界線が外にあるとして計算できます。
隣地斜線の早見表(用途地域ごと)
立ち上がりと勾配は2組だけ。20mなら1.25、31mなら2.5と組で覚えます。どちらになるかは用途地域で決まります。
| 地域 | 立ち上がり | 勾配 |
|---|---|---|
| 住居系第一種・第二種中高層住居専用、第一種・第二種住居、準住居 | 20m | 1.25特定行政庁が指定する区域は31m・2.5(容積率の限度が300%以下の第一種・第二種中高層住居専用地域は指定できない) |
| 商業系・工業系近隣商業、商業、準工業、工業、工業専用 | 31m | 2.5特定行政庁が指定する区域内は除く(下の「かからない地域」) |
| 高層住居誘導地区住宅の部分の床面積が延べ面積の2/3以上の建物 | 31m | 2.5同じく指定区域内は除く |
| 用途地域の指定のない区域 | 20mか31m | 1.25か2.5特定行政庁が区域を分けて定める |
| 第一種・第二種低層住居専用、田園住居 | かからない絶対高さ10mか12m(55条) | |
根拠:建築基準法56条1項2号イ〜ニ、55条1項。特定行政庁の指定は都道府県都市計画審議会の議を経て行う
高さの限度=(その部分から隣地境界線までの水平距離)×勾配+立ち上がり。たとえば住居系で境界線から10m離れた部分は、10×1.25+20=32.5mまで。商業系なら10×2.5+31=56mまでです。
20mと31mの意味隣地斜線は、隣の敷地の採光・通風を守るための決まりです。境界線上でも20m(31m)までは建てられるので、それより低い部分には隣地斜線は効かず、それを超える高い部分だけが、隣地から離れるほど高くできる形で削られます。
隣地斜線がかからない地域
- 低層住居専用地域・田園住居地域:56条1項2号のイ〜ニに入っていないので、隣地斜線はかかりません。代わりに、建物の高さは都市計画で定めた10mか12mを超えられません(55条1項)。10mの地域でも、空地と敷地面積の条件を満たし、特定行政庁が認めたものは12mまで(55条2項)。道路斜線と北側斜線はかかります。
- 商業系などで特定行政庁が指定した区域:近隣商業・商業・準工業・工業・工業専用地域の建物(ロ)と、高層住居誘導地区の住宅の建物(ハ)のうち、特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内のものは、56条1項2号の括弧書きで、隣地斜線の式の「数値が2.5とされている建築物」から除かれています(天空率の56条7項2号も同じ)。これを受けて、港区の案内では、指定した「商業地域で指定容積率600%以上の区域」は隣地斜線制限を適用しないとされています。指定の有無と区域は特定行政庁ごとなので、敷地ごとに確かめます。
なぜ低層住居系にかからないのか10mか12mの絶対高さのほうが先に効くからです。隣地斜線は境界線上でも20mまでは効かないので、原則として12mまでしか建てられない地域では、かけても効く場面がほとんどありません。
後退による緩和(道路斜線との違い)
20mを超える部分(2.5の地域では31mを超える部分)を持つ建物は、その部分から隣地境界線までの水平距離のうち最小のものを、各部分の水平距離に足して計算できます(56条1項2号)。境界線が、下げた距離だけ隣地側にあるとみなすのと同じです。
住居系で、20mを超える部分を境界線から4m下げた建物なら、境界線から4mの位置で(4+4)×1.25+20=30mまで。下げないときの4×1.25+20=25mより5m高くなります(上の図)。
| 隣地斜線の後退 | 道路斜線の後退 | |
|---|---|---|
| 測る部分 | 20m(31m)を超える部分だけそれより低い部分は境界線ぎりぎりでもよい | 建物から地盤面下の部分と、政令で定める部分(条件を満たす物置・ポーチ、門・塀など)は除く |
| 測る先 | 隣地境界線 | 前面道路の境界線 |
| 外へ出るもの | 隣地境界線 | 前面道路の反対側の境界線 |
| 根拠 | 56条1項2号 | 56条2項、施行令130条の12 |
根拠:建築基準法56条1項2号・2項
実務で効くところ隣地斜線の後退は、20m(31m)以下の部分の位置を問いません。低層部を境界線まで張り出し、高層部だけを下げる計画でも、高層部の後退距離で緩和を受けられます。道路斜線のほうは建物そのものからの距離なので、低層部が道路に寄っていれば後退距離は小さくなります(ポーチなど政令で定める部分は除けます)。
建物が2つ以上の地域・地区・区域にまたがるときは、建物の部分ごとに、その部分がある地域の数値を使います(56条5項)。
高さの測り方(地盤面・屋上の階段室)
- 地盤面から測ります。道路斜線は前面道路の路面の中心から測るので、ここが違います(施行令2条1項6号本文・イ)。
- 屋上の階段室・昇降機塔など:水平投影面積の合計が建築面積の1/8以内なら、12mまでは高さに入れません。この扱いは隣地斜線にも使えますが、北側斜線には使えません(施行令2条1項6号ロ)。
- 棟飾・防火壁の屋上突出部などは高さに入れません(施行令2条1項6号ハ)。
公園・広場・水面に接するとき
敷地が公園・広場・水面その他これらに類するものに接するときは、そこに接する隣地境界線は、その幅の1/2だけ外側にあるとみなします(施行令135条の3第1項1号)。
- 除かれる公園:都市公園法施行令2条1項1号の都市公園(主として街区内に住む人が使うための都市公園。いわゆる街区公園)は、この緩和の「公園」に入りません。
- 北側斜線との違い:北側斜線の緩和(施行令135条の4)は水面・線路敷などで、公園は入っていません。
- 計画道路・予定道路:施行令131条の2第2項で計画道路・予定道路を前面道路とみなすときは、その中にある隣地境界線はないものとみなします(135条の3第1項3号)。
敷地が隣地より1m以上低いとき
敷地の地盤面が隣地の地盤面より1m以上低いときは、敷地の地盤面を(高低差−1m)÷2だけ高い位置にあるとみなします(施行令135条の3第1項2号)。隣地に建物がないときは、隣地の平均地表面と比べます。
- 例:3m低い→(3−1)÷2=1m高いとみなす。5m低い→2m。差が1m未満なら緩和はありません。
- 特定行政庁の規則:地形が特殊で、この式をそのまま使うのが著しく不適当なときは、特定行政庁が規則で、敷地の地盤面と隣地の地盤面の間の適当な高さを定めることができます(135条の3第2項)。
なぜ緩めるのか高さは敷地の地盤面から測るので、低い敷地の建物は、隣地の地面から見た高さより高く数えられ、そのぶん厳しくなります。差が1m未満ならそのまま、1m以上なら1mを超える部分の半分だけ地盤面を上げて、その不利を和らげます。
天空率で隣地斜線を外す
隣地斜線に合う建物と同じかそれ以上の天空率(空が見える割合)を確保できる建物は、隣地斜線をかけなくてよくなります(56条7項2号、施行令135条の7)。天空率を測る位置は、隣地境界線から16m(1.25の地域)または12.4m(2.5の地域)外側の線上で、その間隔は8m・6.2m以内です(施行令135条の10)。計画する建物の20m(31m)を超える部分の後退距離が、斜線に合う建物のそれ以上であることも条件です(135条の7第1項2号)。
改正で変わった点
2025年11月1日施行の改正(令和7年政令310号ほか)と、2026年11月1日施行の改正(令和8年政令284号)の前後で、56条と施行令135条の3(隣地斜線の緩和)・135条の7と135条の10(天空率)の文言は変わっていません(e-Govの2025年10月1日時点の版と、2026年11月1日施行の現行版を比べて確かめました)。
一級建築士の試験ではこう出る
隣地斜線そのものを問う問題は、1つ目の高低差の緩和です。2つ目からは、隣地斜線と比べて覚えたい別の規定(北側斜線、55条の絶対高さ)の問題です。
- 敷地の地盤面が隣地より1m以上低いときは、(高低差−1m)の1/2だけ高い位置にあるとみなす。ひっかけ「(高低差)の1/2」は誤り2020
- 北側斜線の問題:北側高さ制限には公園の緩和は無い。隣地斜線の「公園の幅の1/2外側にみなす」を北側に持ち込むのがひっかけ2024
- 55条の絶対高さの問題:低層住居専用地域の高さの限度(都市計画で10m)は、特定行政庁が認めると12m20172024
- 55条の絶対高さの問題:田園住居地域でも同じく、高さの限度10mで条件を満たし特定行政庁が認めたものは12m2021
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住居系の地域で、高さ20mを超える部分を隣地境界線から3m下げた建物。境界線から3mの位置の隣地斜線による高さの限度は?
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敷地の地盤面が隣地より5m低いとき、隣地斜線で敷地の地盤面はどれだけ高い位置にあるとみなす?
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隣地斜線がかからない用途地域は?
法規の数字を、
スワイプで覚える
一級建築士の学科に出る法規の数字を、4択でくり返し解けます。間違えたものは、あとでもう一度出てきます。まずは10問で、いまの予測スコアを。
10問で予測スコアを出す(無料)出典:建築基準法施行令(e-Gov法令検索) 2条1項6号・130条の12・135条の3・135条の4・135条の7・135条の10、建築基準法(e-Gov法令検索)55条・56条、都市公園法施行令(e-Gov法令検索)2条、港区における容積率制限及び斜線制限(港区)、一級建築士試験の過去問。このページは条文の要点をまとめたものです。実際の設計では、条文・告示と所管の行政庁の取り扱いを確かめてください。
更新:2026年10月25日
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